第13章 変わりゆく日常と濃くなる影
「エニシ、ありのままを聞かせてくれ。」
いつのまにか俯いてたみたい。
下がった視線を戻すと、強い瞳とかち合う。
「全て信じるとは言わない。だが、何を言っても否定だけはしない。」
全部信じるって言わないのがイタチらしい。
私はふう、と肩の力を抜いた。
否定はしないと…言ってくれた。
「どこから話したらいいかな…。」
側から聞いたら荒唐無稽な話だと思う。
でも、兄ちゃんは半信半疑ながらも最後まで聞いてくれた。
嘘だ、信じない、なんて一度も言わなかった。
「信じられない話かもしれないけど…。私、前世の記憶があるの…。」
イタチだってきっと…耳を傾けてくれる。
「こことは何もかもが違う世界に生きてた。ここみたいにチャクラなんてものは存在してなくて、忍もいなくて…、」
忍みたいに早く走れない代わりに車や電車があった。
木渡りが出来ない代わりに飛行機があった。
水の上を歩けない代わりに船舶があった。
自然は少ないけど科学力は圧倒的だった。
中でもインターネットの発達は目覚ましい。
その最たる物がスマホだと思う。
「常識は違うし、世界地図も違う。国ごとの言葉も違うし、規模も違う。」
「…火の国と水の国も規模が違うぞ。」
肥沃な土地か、そうでないかなんてレベルじゃない。
「それよりももっと。もっと想像つかないくらい規模が違うの。」
アフリカとアメリカみたいに。
バチカンとロシアみたいに。
国の広さも違えば、人の多さも国力も違う。
貧富の差はピンキリで、学力の水準もそれぞれ。
「洞窟で見た文字は、英語って言ってね。前世では共用語で知られてた言語だったの。」
「なるほどな…。道理で。」
イタチは腑に落ちた様に、ふぅと息を吐いた。
「あの時はひやひやしたよ。兄ちゃんにそうなのか?なんて聞き返すから。」
私が苦笑すると、イタチは少し笑う。
「行商人の市は俺も度々行くからな。そんな珍しいものがあれば目を引かない筈がない。話にも出たことがなかったから、おかしいとは思ったんだ。」
「さすがイタチ。」
にっと笑うと、彼はやれやれと肩を肩をすくめた。