第13章 変わりゆく日常と濃くなる影
「大体半分以上はいったかな。」
割合として、五分の三は黒く染まったかなってところ。
「そろそろ風下に付けるか?」
「うん、やってみよう。」
三人で風下に回ると、ユウは溝で待機。
私とトウキが草むらに少し入った所で止まる。
そして、私達は互いに見合って頷くと、同時に印を組んだ。
「「火遁、火炎放射。」」
ボウゥ、パチパチパチ…
火が付いたところで、私達は素早く溝に避難する。
「風上の時と違うな。」
「あぁ、燃え広がらない。」
「若干こっち側に来てる…のかな?」
私の呟きに、二人は首をこっちにぐりんと向けてくる。
「おい、話が違うぞ。」
「どうすんだよ、これ。」
私はリュックを開けて巻物を取り出す。
これ、四次元ポケットみたいで便利なのよ〜。
えーっと、良さそうなものは…。
「あ、うちわがある。」
印を組んで手を当てると、ボンっと巨大団扇が飛び出してきた。
うん、状態はよろしいようで。
「…なんで”祭り”?」
ユウは怪訝な顔で、掲げた団扇を見上げた。
「それは…知らん…。」
何でなんでしょう。
行商人が並べてた中で、これが面白いなと思って買っただけなんです。
「何でもいいから中央へ火を回せ。」
トウキに煽られ、私はせっせと風下の火を扇ぎ始める。
せっせと。
せっせと、せっせと…。
……。
うーん…。
思ってたんと違う…。
「これじゃ、ぶつからないぞ。」
風上側と風下側とツートンになっただけ、みたいな…。
「これで火が消えなかったら…。」
「え、怖い事言わないでよ。」
「「言い出しっぺ!!」」
私はごめん、と首を竦めた。
「じゃあさ、風下の溝の幅をもう少し広げてみようよ。で、燃やしちゃった所は万が一の為にユウに火の番してもらって、はみ出る様だったら水撒いてもらって食い止める。どう?」
「それしか取れる手はないだろうな。」
ユウは渋い顔で頷き、
「やるぞ。」
「「分かった。」」
トウキのかけ声に私達は頷いた。