第12章 ここが人生の分岐点だったのかも…
「…いや、そっとしておく方がいい。エニシにとってもイタチにとっても、それは悪いキッカケになりかねないですから。」
「そうかしら。」
「大人と違って難しい年頃なんですよ。」
暢気に返すアンコにシスイは苦笑する。
「兄貴であるシスイが言うんだ。そっとしといてやろうぜ。」
「だな。色恋に首を突っ込めば馬に蹴られるぞ。」
「何よそれ。縁結びをしてやろうって言ってんのに何で邪魔することになってんのよ。」
アオバとライドウの揶揄い半分のやんわりとした制止に、アンコが膨れて牙を剥く。
「ま、そう怒るなって。こういうもんは成る様になるさ。」
「逆を言えば成らないもんは成らない。」
「性格悪〜。」
一見すると冷たく突き放した様な二人の言い様に、アンコは白けた視線を送り、ライドウは思い当たる節があるのか肩をすくめてそっぽを向いた。
「事実だろ。だから、悪くしたくなきゃ変な首を突っ込むもんじゃないのさ。」
「要は静かに見守ってやろうぜ、って話。」
「は〜あ、そうやって草食やってるといつまで経っても女が出来ないわよ。」
「「お互い様だろ。」」
気心知れた三人の会話に、シスイは楽しいながらも苦笑を浮かべた。
窓からは相変わらずエニシとイタチが楽しそうに虎達と戯れている。
エニシの恋心には、今が一番幸せな距離なのかもしれない。
恋人でもなく、赤の他人でもない。
友達とも言えなくもないが、もう少し近くて柔らかい。
名前のつかないその優しい間柄が、一番心地よいのだろう。
もちろん、イタチにとっても。