第12章 ここが人生の分岐点だったのかも…
「ふーん…。」
客室の窓から見下ろしていたアンコは、にんまりと口元に弧を描きながら小さく呟く。
「なるほどね。」
「お前は知ってたのか?」
三人は揃って窓からシスイの方に顔を向けると、彼は苦笑しながらも頷いた。
「まぁ、多少は。」
尤も、本人はあれで想いを断ち切ったつもりでいるのだが。
側から見ている限り、その想いは消えるどころか奥の方で揺蕩い燻っている。
「イタチは気づいてるの?」
「いいえ。微塵も気づいている様子はないです。」
アンコの問いにシスイは少し笑う。
これ程までに分かりやすい好意に、イタチは未だ気づく様子はない。
「満更でもない様に見えるがな。」
「つついてみれば?案外いいキッカケになるかもよ。」
アオバとアンコが揶揄い半分でそんな事を言い合った。
だが、それにシスイはふっと笑みを消して視線を落とす。
"この想いはいずれ消す。私はイタチとどうこうなりたいとは思ってないから。”
脳裏には、いつかにそう語ったエニシの悲しげな瞳が思い浮かんでいた。
エニシの”その記憶”が正しければ、イタチはいずれうちはを滅ぼし里を抜ける。
もしその時がくれば、エニシは想い人に殺されることになるだろう。
みすみすその記憶を辿る気はないが。
だが万が一の場合は、エニシにとっては酷な話になる。
愛しい人に望まれるのではなく、刃を向けられるのだから。