第12章 ここが人生の分岐点だったのかも…
「あれ…?」
よくよく見ると、二匹とも首に雅な瑠璃色の首輪をしている。
「兄ちゃん。」
「ああ。」
兄ちゃんも気づいたらしい。
「イタチ、その虎を解放してやれ。」
「…暴れるぞ?」
「エニシがいる。」
拘束具を付ければいいのね。ガッテン承知。
私が構えたのを見て、イタチは水牢を解いた。
逃げようと立ち上がる虎に、すかさず拘束具を取り付けて素早く地面に縫い付ける。
二匹とも興奮状態で、手足をばたつかせつつ私達を見ては唸り声をあげて威嚇を放つ。
私は最初に捕獲した方の虎ちゃんの前にしゃがみ込んだ。
…こんな状態でアレだけど、私ネコ科動物に目がなくて。
かわゆくて仕方ないのですよー!
「あんた、何してるの?」
アンコさんが呆れ声をかけてきたんだけど、私はそちらに振り向く事なく、目が虎ちゃんに釘付けになっていた。
「いやー、触らせてくれないかなぁ、って。」
手を出そうとする度、当然だけど噛みつこうとする。
猫だったら、素直に噛みつかれてやると少しは警戒心が薄れたりするんだけど、相手は虎だ。
そんなことやったら致命傷になる。
「おーい、これまたたびじゃないか?」
ライドウさんが何処からか木の枝を数本持ってきてくれた。
すると、虎ちゃん達の様子が変わる。
さっそくライドウさんから一本譲ってもらい、虎ちゃんに差し出すと、鼻息荒くくんかくんかと嗅ぎ出した。
そして、夢中で枝に頬ずりをし出した。
「かわええ〜…。」
その隙に、そっと後ろ頭を撫でると気にする様子もなく、またたびに夢中の様子。
猫と比べるとごわごわな毛ざわりだけど、毛並みは大変よろしく、誰かにきちんと手入れされてるのが分かる。
更に、耳辺りから強めに撫でてみるも、こちらを嫌がる様子はない。
調子に乗って喉の上辺りを撫でてみると、目を細めて気持ちよさそうにゴロゴロと鳴らしてくれた。
「はあ〜。猫ちゃんかわええ〜。」
「虎だけどな。」
アオバさんが呆れた様子で私の隣に並ぶ。
「どっちもおんなじ様なもんですがな〜。」
遂に私は猫ちゃんへの頬ずりを成功させる。
猫ちゃん特有の癒される香りを堪能中。
あったかぁ〜。