第12章 ここが人生の分岐点だったのかも…
暫く他愛もない話をしながら磁場狂いの場所を抜けると、日は翳り出し、空は夕闇の準備段階に入り始めた。
暖かい風はいつの間にか冷たい風に変わっている。
「さむ〜。」
私は思わず袖を摩った。
切実にダウンがほしい。
「よし、こっからは走って帰るぞ。」
よっしゃ!寒いのからおさらばだー!
さあ走るぞ、って全員が構えた時に、何処からかがさがさと音がしていた。
「…これ何の音ですかね。」
私は妙にデカいがさがさ音がめちゃくちゃ気になって、眼を切り替えて辺りを見回した。
すると、同じ様に見回していた兄ちゃんとイタチの空気が変わる。
「あそこだ…!」
指を差した先を見ると、少し離れた林の草木に紛れてこちらを窺っている二頭。
「虎…?こんな所に?」
何でこんな辺鄙な所に?って思ってたら、虎も隠れてるのがバレたのが分かったのだろう。
二頭ともこちらに向かって走り出した。
「来ます!」
私はアンコさん達に叫ぶと、三人は咄嗟に構えた。
目視で姿を捉えられる頃には、もう二メートルあるかないかの距離だった。
「でかっ!!」
思わず叫ぶくらいには立派な体躯をした毛並みの綺麗な虎だった。
「土遁、土流壁!」
反射的に、真っ直ぐ向かってきた一匹を土流壁で食い止めると、素直に直撃してくれた様で、間近で凄い痛そうな音がした。さすが獣だね。
素早く術を解くと、その子がよろよろとしているので、生け取りよろしく動体に岩の拘束具を嵌め込んで地面に沈めた。
「水遁、水牢の術。」
イタチの大きな水牢に見事に嵌ったもう一匹も、パニック起こしながら中でもがいていた。