第12章 ここが人生の分岐点だったのかも…
「……、…エニシ!エニシ!!」
兄ちゃんの切羽詰まった声が耳に届き、次第に意識が浮上していく。
それと同時に、体が四方八方から揺すられていることに気づく。
こんな起こされ方をされるのは未だかつてない。
その場でぐるぐると回る絶叫マシーンに乗ってるみたいよ。
ゆっくり目を開けると、ぼんやりと幾つかの顔が覗き込んでるのが見えて、瞬きを数度してからもう一回目を開くと兄ちゃんがほっとした様な顔をしてるのがど真ん中にあった。
その向かい側にイタチ、上下左右にアンコさん、ライドウさん、アオバさんもあって、みんな一様に安堵してるのが窺える。
「ったく、焦ったわよ。あんただけぴくりとも動かないんだもの。」
「一時的に呼吸や脈が弱くなってってな。このまま駄目になるのかとヒヤヒヤしたんだ。」
と語るのは、アンコさんとライドウさん。
なんだって私だけそんな状態になったんでしょう。
やっぱり、あの鍵に呪いでもかかってるんじゃないの?
っていうか、そもそもあれは夢なのでは?
なんて思いながら体を起こすと、コロンと乾いた音がした。
そちらを見ると、まさかの貰った鍵が落ちていた。
あれ…?夢だったのでは…?
手に取って、見れば見るほど宝飾品。
陽の光は鍵を素通りし、手に新緑の影を作る。
滑らかな手触りで、角張った所がどこにもない。
傷や変色、濁りみたいなものは見当たらず、透明度は抜群。
「これ、翠玉じゃないか?」
アオバさんが覗き込んできた。
どれどれと、みんなも覗き込む。
「へぇ、これが。」
「俺も聞いたことあります。見たのは初めてですが。」
と、ライドウさんと兄ちゃん。
「綺麗ねぇ、ちょっと見せて。」
「あ、ちょっ…、」
アンコさんがひょいっと摘んで持ち上げると、なんとぐにゃりと曲がり始め、どろりと指の間をすり抜けていく。
そして、地面に落ちる頃にはコロンという音を立てて元に戻っていた。