第12章 ここが人生の分岐点だったのかも…
「えーっと…。あなたは烏の精か何かですか?」
我ながらちょっと苦しかったかも。
思いつかなかったとは言え、烏って…。
「ふふっ。そうだね、そう思ってくれても構わないよ。」
まさかの肯定が返ってきましたよ。
何となく、その笑顔に既視感を覚える。
静かに笑うとことか目の動かし方とか、何となくだけど。
ふと、その人は真面目な顔付きになった。
「これは私からの最後の贈り物になるだろう。」
「最後…?」
いや、あなたに会ったのは初めてなんですが。
初めてだよね…?
「これが君にとっての最善ではない事を祈る。」
そう言うと、手に乗せていた透明な光の玉がふいーっと浮いて私の目の前にやってくる。
私は慌てて両手を差し出した。
光の玉はふわりと私の手を乗ると、シャボン玉が割れる様に僅かな光の粉を散らしながら割れてしまう。
すると重力を思い出した様に、中にあった緑の鍵が手に落ちた。
「これって何の鍵なんですか?」
矯めつ眇めつその鍵を見てみるも、見れば見るほど宝飾品にしか見えない。
「君がそれを必要とすれば自ずと分かるよ。」
「じゃあ、必要としなければ?」
「どうもしないよ、そのままさ。」
それって本当に要るの?
「ただ一つ。これだけは肌身離さず持っていて。決して手放してはいけないよ。」
「これを…。」
何の為に、とは言葉が続かなかった。
何でかと言うと、闇に溶けていく様にその人の姿が消えていったから。
言葉が出なかった。
まるで幽霊を見た気分だった。
「な、に…?」
思わず膝から崩れて尻餅をついた。