第12章 ここが人生の分岐点だったのかも…
あー…、でも綺麗だなぁ…。
…だめだめだめ。
「うちは…知らない人から物もらってはいけませんって、決まりがありまして…。」
目が釘付けで言っても説得力ないかもだけど。
けれど、そう言ったら何故かその人は困った様に笑った。
心なしか少し寂しそうにも見える。
「知っている人ならいいのかい?」
「そりゃあ、まあ…?」
知り合いだったら、逆にこんな珍しい物はくれないと思うけど。
「ならば自己紹介をしようか。」
「はい…?」
私が戸惑っていると、その人の髪色や瞳の色が炭を流した様に黒く染まっていく。
清涼だと思っていた印象は、一気に昏いものに変化する。
何も無かった背後から羽が生えると同時に、空も地面も黒く変化する。
全ての色が反転した様なその変わり様に恐れ慄くより他はない。
周りを見渡していたその目を再び目の前の人に向けると、再びその人は手を差し出してきた。その手にはさっきと同じ様に緑の綺麗な鍵が浮かんでいる。
周りが真っ暗なせいか、夜空に浮かぶ花火の様に煌めく緑がよく見えた。
どうやってこんな複雑なレリーフを作ったのかと思うくらい、それは精巧で綺麗な芸術品だった。
けれども、手を出す気には全くなれない。
何故なら、その人の羽が真っ黒だったから!それが六枚も出てる得体の知れない人だから!!
人の身長は優に超える鳥の羽そのもので、そんな物生やした人間は本の中でしか知らない。
……。
黒い羽の生えた人ってさ、まさか堕天使だったりするのかなぁ…。
しかも、羽の枚数で強さが変わるって話聞いたことがある。
尤も、それは天使の話なんだけど。
それが六枚ってやばくない?
ここは正直に堕天使ですかって聞くべき?
…いやいや、そんなん聞いたら生きて帰れない気がする。
そもそも、天使や悪魔の概念なんてないこの世界で、そんなの怪しい者ですって言ってる様なものだよね。
敵認定されるのも嫌だし。
うわー…。ここはいっちょボケてみるべき?