第12章 ここが人生の分岐点だったのかも…
暫く流れるままに思い出を辿っていて、はっと気づくと今度は様子が違う所に出た。
晴天の下、一面の湖の上みたいな、見渡す限りに続く空色。
ふと、気づくと身体中の自由が戻っている。
手足も好きに動かせるし、胴体も思うまま。
あの幻術みたいなスライドショーが終わったのかと思ったんだけど、ここは元の場所ではない。
「やあ。」
突然後ろから声をかけられた。
聞き覚えのない澄んだ声。
男の人に澄んだ声ってのも変な話だけど、心地よくて安心する清明な音。
そのせいか、特に警戒することなく声の方へ振り返る。
すると、珍しい銀色の髪の綺麗な人が少し離れた所に佇んでいた。長い髪を後ろで一つに結っている。
まつ毛も眉毛も銀色なんだけど、瞳だけは黄金色だった。
神々しい宝石の様な黄金色が優しげに細められている。
洒落た黒のジャケットに、暗く濃い赤のシャツがちらりと見え、タイも光沢のある黒。これまた黒のスラックスに、一目で高級と分かる黒の革靴。
全部真っ黒だと思うなかれ。
その黒がまた綺麗な銀を引き立てるいい配色になっているのだ。
二次元から出てきた人ですか?ってなくらいに全てが完璧な人。
「思い出は楽しかった?」
あー、なるほど。
この人が大元か…。
手も足もでなさそう…。
「はい、まあ…。楽しめました。」
実際、忘れていた思い出が多々ある。
それを思い出せたのはラッキーだったのかも。
「ところで、何故態々こんなことを?」
幻術で精神的に追い詰めて、ってんなら理解できる。
目的は知らんけど、相手を陥落させるには精神を落とすのは有効だから。
でもやってる事は真逆だ。
「これを君に渡したかったから。」
そう言って差し出された片手から、光の膜に包まれ浮かんでいる緑色の鍵が現れた。
うわ〜、きれ〜!
…いやいやいや。
欲に目が眩んで受け取ったら、後々痛い目見るパターンなのでは…?