第12章 ここが人生の分岐点だったのかも…
『そんなにカカシが好きなの?』
『えぇ、好きですとも。』
このやりとりに少しの胸の痛みと、エニシの興味がイタチに向けられていないという悔しさとも憤りともつかない、泥の様な想いが胸の底に降り積もる。
「イタチ?大丈夫か?」
シスイから心配の声がかかり、彼はようやく物思いに耽っていることを自覚する。
「あ、あぁ。」
少しの間に、話は随分と盛り上がっていた様だ。
「やっぱり〜!カカシ先生ってば、もってもて〜!」
エニシが楽しそうにはしゃぐ。
「バレンタインの時なんか山ほどチョコ貰いやがってさ〜。けど自分がチョコ嫌いなもんだから俺らに配るわけよ。」
「あ、さてはライドウさんチョコ一つも貰えなかった的な?」
「うっせ。」
「かわいそうだね。」
「半笑いで言うな!」
「私はおこぼれにありつけたから嬉しかったけどねぇ。」
「え、まさかアンコさんカカシ先生のチョコ食べてたんですか?」
「だって年に一度の”タダ”チョコ食べ放題の日よ?」
「イベントの内容変えたらアカンでしょ。」
「その代わり、自分のチョコを食べられたって知った女子達に呼び出しくらってたよな。」
ライドウが冷やかすも、アンコはどこ吹く風だ。
「返り討ちにしたけどね。」
「うわー、女の敵じゃん。」
エニシの言葉に、アンコの眉がぴくりと動いた。
けれども彼女はそれに気づかない。
「私、女だけど?」
「女なのに女の敵。」
エニシはケラケラと笑う。
「やーねー、そんなの想いが届かなかった時点で既に捨てられる運命なんだからさ〜。それを拾って何が悪いのよ?」
「そこまでしてチョコ食いたい?」
「あ゛あ゛ん?」
アンコの威嚇に、漸くエニシは気づき、慌てて訂正に入った。