第11章 うちはの会合に初参加です
「よぉ、珍しいな。」
ざっ、ざっ、とだるそうなサンダルの音と共に、渋い声が静かに響いた。
その声に聞き覚えのあった私は、ぱっと顔を上げる。
「シカクさん!」
いつも小忙しい人がお迎えなんて珍しい。
私を見たシカクさんはにっと笑う。
「ヨシノに頼まれたんだよ。今夕飯の支度で忙しいからな。」
「あー…。もしかして返ってきて早々一杯やろうとしました?」
ヨシノさんが偶に愚痴をこぼす時があるんだよね。
案の定、眉がぴくりと動いた。
と思ったら少し渋面を作るシカクさん。
「お前、何で分かったんだ?」
「「ふはっ。」」
兄ちゃんと一緒に吹き出した。
「どこの家庭も変わらないって事ですね。」
「そーですな。」
うちの父さんも夕飯前にやって、母さんの逆鱗に触れたことがある。
「はぁ〜あ、ったく。どこも女はうるせぇこって。」
「またまた〜。そう言いつつもヨシノさん大好きなくせに。」
にまにまと私が揶揄うと、シカクさんは照れるどころか胸を張り出した。
「あったりめぇだろ。自分で見つけてきた女房だからな。」
わぁ…、大人の余裕…。
「つまんない。」
もっとあたふたしたところを見たかったのに。
「残念だったな。俺は愛妻家と子煩悩で通ってるんだ。」
けっ。らぶらぶってか?
「お前、ブサイクになってるぞ。」
兄ちゃんがくつくつと笑うのを、そのままの顔で見やった。
私の横で、シカマルのため息が聞こえて見下ろすと、何と少し顔を赤らめてるではありませんか!
めっずらすぃ。
「ったく…。やめろよ、親父。」
シカマルの方が逆に照れるって…これ如何に?
「何だよ、シカマル。俺が子煩悩で良かったじゃねーか。」
シカクさんはシカマルをひょいっと抱き上げながら笑う。
けれどもシカマルは抱き上げられた状態で器用に腕を組んでぶすっと膨れた。
「そうだな。でもそうじゃねぇ。」
言いたいことは伝わるよ、シカマル君。
「いいんだよ、エニシにはこれでいいんだ。」
「…よく分かってらっしゃいますね…。」
私対策だったとは…。
もっと大人を揶揄うんじゃない!的な展開がほしかったよ。
「シカクさんを出し抜くのは至難の業って事だな。」
ぽんぽん、と揶揄う様に兄ちゃんが肩を叩いてきた。
「はあ〜あ。分かってますよーだ。」
ふんだ!