第11章 うちはの会合に初参加です
自分の荒い呼吸音を聞きながら、木や岩を避けてアップダウンする山道をひた走る。
本当は木から木へ移り飛ぶ方が速いんだけど、これはトレーニング。
だから楽な方取ったらやる意味はあまりない。
先の道を予測しつつ、最短のルートを選んでいく。
予測は瞬時の判断の積み重ねだ。
どん詰まりになったり、スピードダウンする様な道に出会したらアウト。
これが中々集中力がいるんだな。
無心で走ってる内に、矢倉が見えてきた。
スグルさんの村の目印だ。
あともうちょっと。
私はラストスパートをかけた。
3…、2…、1…。
「ゴール…!」
矢倉に着くと同時に、草むらにダイブする様に寝転がった。
もう息も絶え絶えで呼吸が苦しい。
「エニシじゃないか!どうしたんだ!?敵襲か!?」
エイリさんが見張だったらしい。
降りてきて開口一番そう言って、私と私が走ってきた方を見比べる。
「ちがう、ちがう…。あのね、ただの、トレーニング…。」
私は切れ切れの呼吸の合間に答えた。
今は話すのもしんどい。
「トレーニング、なのか…?」
何で今?って思うよね。
でも、今は時間が惜しいのよ。
タイムリミットが明確に迫ってるから。
少しでも無駄にはしたくない。
「ところで…、いま、なんじですか…?」
大体のタイムだけは覚えとかなきゃ。
「あ、あぁ。今は7時半ってところだな。って…、大丈夫か?」
私はエイリさんに、身振り手振りで大丈夫と答える。
どうやら、二時間を約三十分に短縮できたみたい。
今日のタイムが今後の目安だな。
今度ストップウォッチでも買っとこ。
すうぅぅ〜、はぁぁ〜…。
やっと息が整ってきた。
うん、体も思ったより疲れは出てないみたい。
「今更ですが、今日は治療に来ました。通ってもいいですか?」
「あぁ…、うん、どうぞ…。まさかとは思うが里からずっと走ってきたのか?」
エイリさんは不思議そうにしながら尋ねてきた。
「そうですよ。基礎体力アップです。」
別に隠す事でもないので正直に答える。
だが、聞いたエイリさんはあんぐりと口を開けた。
「この距離をずっとか?」
「はい、ずっと。」
そんなに不思議な事でもないと思うんだけど。
私が小首を傾げて見せると、エイリさんは何故か頭を抱えてしまった。
「末恐ろしい…。」
いやいや、大袈裟でしょ。