第11章 うちはの会合に初参加です
声が届かなかったことが悲しかった。
兄ちゃんに止められたのが悲しかった。
分かってくれる人がいないのが辛い…。
兄ちゃんに担がれた肩の上でだらんと伸びながら、止めどなく溢れてくる涙を見送った。
「エニシ、降りろ。」
兄ちゃんは言って私を下ろした。
のろのろと立ち上がって辺りを見ると、家の前だった。
こんな風に家を見上げるのって、もう残り少ないのかも。
そう思ったら泣けてきた。
幾度となく景色がぼやけてはクリアになり、その度に頬に涙が伝うのが分かった。
「兄ちゃん…。」
私は縋るように呼ぶ。
「何だ…。」
案外優しい声音で返ってきた返事に益々涙が溢れた。
「言った通りだったね…。もう、本当に…、どうにもならないのかな…。」
破滅の道しか、もう残ってないのかな。
兄ちゃんは私の言葉を聞いて、黙ったまま私の頭を撫でた。
その手が優しくて心地よくて、色々限界だった。
私は力無く声を上げた。
何で?
慰めるくらいだったら、何で止めたの?
もう出来ることってないの?
未来を知っているのに、何も変えられないまま終わるの?
無力感。
絶望。
悔恨。
重苦しい想いが私を包み込んで侵食する。
体はかっかと熱いのに、心が凍るみたいに寒かった。
「嫌だよ…。死なないでほしいよ…。」
言い表せない悲しみが私の中に渦巻いていた。
立っているのも難しくなり、ゆっくりと膝から崩れて座り込んでしまう。
「エニシ…。」
視界の半分に兄ちゃんが写り込む。
沈んだ声とは裏腹に、その目は見開かれていた。
「お前…。」
視界が揺れてはクリアになり、を繰り返す中、兄ちゃんがやけに存在感のあるのが気になった。
「三つ巴…。」
「…へ…?」
この日、私は奇しくも写輪眼が巴三つまで開いたのだった。