第10章 下忍スタート
「田畑に影響が出る程あるということは、かなり広範囲に根強く群生していると思われます。ですから受注さえ確保出来れば安定した収入になるし、里にしてみれば武器の一つが安定して手に入ります。」
お互い得だと思うの。
二つ目の条件だと、依頼が少なくなったら食いっぱぐれるのはスグルさん達。
それだと良い時と悪い時の落差が激しすぎる。
その点、痺れ薬製造だと依頼の多い少ないに左右される事はない。
それにムナの実が目減りすれば、土壌改善にも貢献出来るんじゃないかな。
「なので、二つ目の条件が里としては認められないのであれば、痺れ薬を売る許可をいただけませんか?」
「ふむ…。ムナの実を直接買うわけにはいかないのか?奈良家で取引するんだろう?」
側近さんが初めて口を開いた。
「直接買ってもいいんですが、処理や精製が面倒だと思います。材料を買うより出来合いを買った方がコストが安いです。」
「それはそうだが、痺れ薬と言えど毒だろう?その精製を他者にさせるのはどうだろうな。」
それを聞いて、スグルさんを見た。
スグルさんは、意図を飲み込めず目を瞬かせながら私を見る。
「製造工程を話してもらってもいいですか?」
私が言うと、スグルさんは合点がいった様で、側近さんに向き直る。
「あー…。痺れ薬を作るには二つの工程を経る。
まず一つは、ムナの皮剥き。
ムナの実は手にすっぽり収まるくらいの大きさだから、皮剥きはかなり面倒なものだ。しかも厚皮に覆われてるから力と根気が要る。
二つ目は、実を潰して液を濾す。
この時、素手で長い時間触ったり、蒸気を吸ったりすると薬を吸った時の様に痺れてしまうから、風通しのいい広い場所でやる事と小まめに手を洗うことが肝要だ。」
「更に言えば、この過程ででるムナのカスがかなり大量に出ますし、捨てる場所にも困ります。」
私は、スグルさんの言葉尻を受けて、情報を付け足す。
「俺達は燃やすけどな。」
燃やすんだ…。
よく体が無事だな。
「…慣れてるだろうから何ともないんでしょうけど、免疫がないと、その燃やした煙を吸うだけでも痺れると思いますよ。」
私が少し呆れて言うと、スグルさん達は、そうか、と少し首を傾げつつ言う。