第10章 下忍スタート
「肺炎、ですかね。」
それも慢性的になっている肺炎なんじゃないかな。
治りきらない内に動いて、またぶり返してを繰り返す。悪循環だね。
それを長年続けていく内に肺胞が絶えず炎症を起こして壊死の一歩手前まで悪くなる。
このまま放っておけば、この子は遠からず寝たきりか死に至るとみる。
けど、手に負えないかって言ったらそうでもない。
ただ長期戦になるってだけ。
「治るのか…?」
スグルさんが不安そうに尋ねてきたので、正直に見立てを話す。
「出来なくはないです。ただ、一回で治るとは考えにくいから、数回に分けての治療が必要とみます。」
あと薬も。
これは治療費莫大になるね。
確かになりふり構ってられないかも。
けど、同情はしても譲歩はしない。
「換算すると、ざっと三十万両以上はすると思います。」
この世界の通貨は”両”。
一両=十円。
つまり、日本円でいう三百万円相当ってところだろう。
中忍の一ヶ月の給与平均が二万両。
それを考えると、とんでもない額と言える。
しかも、あくまで最低価格だからね。
「やはりか…。」
予想はしてたのか、スグルさんは難しい顔で黙り込む。
「さて…。私の提案、乗りますか?」
この問いに、スグルさんは顔を上げる。
それは、覚悟を決めた様な引き締まった表情だった。
「あぁ…。お前の提案に乗る。」
あとはスグルさんの交渉力次第、だね。