第10章 下忍スタート
「実際に何度かシマを荒らしに来た奴らはいたし、その度に俺達は力ずくでこのシマを守った。」
「負ければ否応なしに他へ移らなきゃならないからな。」
盗賊達はそう付け足す。
でも、一つ疑問が湧く。
「あの、大前提を聞いてもいいですか?」
「何だ?」
「農業をしようとは思わなかったんですか?」
これだけ広大な土地があって、何で畑をしようとは思わなかったんだろうって事。
湧水もあるし、人が多くいるわけでもないんだから、耕そうと思えば出来るんじゃないかな、と思うんだけど…。
その問いに、盗賊達は一様に黙り込む。
そして、沈黙を破るかの様に頭が口を開いた。
「そう思ったご先祖もいたらしいがな。だが、作物は上手く育たない。育っても質が悪いんだ。」
「質が悪い?」
「あぁ。ここら辺で出来た野菜を食べると体に麻痺が起こる。」
「え゛?」
それって、もしかして…。
「ムナの実のせい?」
「よく知ってるな。」
「湧水の近くに生えてましたから。っていうか向こうの水源にムナの実の毒を混ぜましたよね?」
ついでに問い詰めとこうと、さっきの湧水の崖を指さすと、頭は苦笑で答えた。
「すまんな。だが、極少量だから命に別状はないはずだ。」
いやいや、ダメだろ。
っていうか、やっぱりこの人達だったわ。
「…まぁ、今は良しとします。つまり、作物は作っても食べられないんですね?」
「あぁ。土を変えたりと色々してみたらしいが、最初は良くても半年くらい経つとまた同じになっちまうのさ。」
って事は、土を変えれば何とかなりそうだな。
とすると、問題はどうやって田畑を区切るか、じゃないかな。