第10章 下忍スタート
「…そうさ。」
盗賊の一人が答える。
「けれど、あなた方は娘さんの事がある前からここら一帯で追い剥ぎをしていますよね?」
先生の追求に盗賊達は一様に押し黙る。
「確かにやってたが、俺達には俺達なりの決まりがあった。
殺しはしない事、そして金持ちからしか獲らない事。」
「でも、今は誰彼構わず襲ってる印象ですよね?」
先生の追求に、頭は目を伏せた。
「まぁな…。娘の事があってからは選り好みはしていられなくなった。」
「じゃ、その娘さんの事が解決すれば、追い剥ぎをやめるのか?」
トウキは極論とも言える問いを投げかけると、頭は少し目元を険しくして私達を見た。
「…これが俺達の生きる術だ。」
「虫がよすぎねぇか?それ。」
確かにねぇ…。ユウのいう事は尤もだと思う。
けど、盗賊達は一様に目元を険しくさせて、私達を睨みつける様に見た。
「…お前達には分からんさ。生まれながらに忍として生きる道を与えられているんだからな。その時点で飢えとは無縁だろう。」
「忍はなりたくてもなれるもんじゃねぇし、その資格がなきゃ仕事は回ってこねぇ。」
「それにここは…、二束三文で生きていけるほど豊かな土地でもねぇのさ。」
頭は、怒りを押し込めた様に静かに息を吸い込むと、冷たい視線を投げる。
「…たとえ俺達がやめたところで、また違う奴がやって来てここら一帯を占めるだけさ。そしたらどうなるんだろうな。俺達は殺しはしないと決めている。だが、それはあくまで俺達だけのルールだ。」
「殺して奪う奴が出てくるかもしれないってこと?」
私が訊ねると、
「そういうことだ。」
肯定の答えが返ってきた。