第10章 下忍スタート
私達の様子を見ていた先生は、困った様に笑う。
「まぁ…。話を聞くんなら、とりあえずこっちにおいで。」
先生に手招きされて、私達はヤギをお爺さんに預けて盗賊達の側に集まった。
彼らは戸惑い、先生と頭を見比べながらも様子を窺っている。
頭は、目の前に座った私を、少し当惑しながらも真っ直ぐに見つめている。
「あー…。何から話せばいいかな…。」
「え?そんなにあるの?」
思わず突っ込んだ。
てっきり”あの子”の話だけかと思ってたよ。
「聞くつもりがあるなら黙っとけ?」
トウキに突っ込まれました。
はい、お口チャックします。
それを聞いた頭が、軽く咳払いをして少し居住まいを正す。
縛られてるから全然変化ないけど。
「治してほしいのは俺じゃない。娘だ。」
娘さんかぁ。
「病気、ですか?」
「三年位前に川に落ちて以来、床に伏せる事が多くなってな…。」
頭はそう言うと、苦し気に顔を伏せた。
「妻の…忘れ形見なんだ。三年前のあの日、娘を助けようと荒れた川へ飛び込んで死んでしまった。だから、なんとしても娘だけは助けたい。」
「だが、医者に診せようにも金が要るんだ。治療代も莫大な額が要る。」
頭の言葉に繋げる様に、他の人も口を開く。
「目ぼしい仕事は大国の木の葉に取られちまって働き口はない。」
「少ない給金の仕事を皆でちまちまやってたって、診せるのがやっとの額しか貯まらねぇんだ。」
いやねぇ…。
気持ちは分かるけど、それが盗賊をしていい理由にはならないし、しちゃいけないんじゃないかな。
そう思ってたら、
「それが、あなた方が追い剥ぎをする理由ですか?」
先生が静かに訊ねた。