第2章 これからどうしよう

エニシは、全滅を止めたいと言っていたが、シスイにはそう簡単に成し遂げられることではないと思う。

『人の意思や流れは一人の力ではどうにも出来ないんだ。心を変える事はとても難しい。』

そう言った時の、絶望が滲んだエニシの顔を思い出す。
その一言でおそらくエニシはクーデターの事を、止められない運命である事を悟っただろう。

聡い子だと、シスイは思った。
おっとりしている、なんて。忍には向かない、なんて思っていたけれど、そんな事はなかった。
十分にやっていける。

『一族全滅の阻止を最後の目標にするな。』

その一言で持ち直した精神力は大したものだ、とシスイは感心した。
家族が皆死ぬ事を、エニシは静かに冷静に受け止めて見せたのだ。
立ち止まらず、その先を考える事が出来た。

「エニシを逃す事も考えなくちゃな…。」

エニシには、エニシだけは一族全滅から逃れてほしい、とシスイは切に願う。

彼の脳裏には親しい友の姿が過っていた。

「…お互い、兄弟には弱いものだな。」

シスイはそう呟いて、愛おしそうに妹の頬を撫でた。