第10章 下忍スタート
「あれ?そういえばお爺さんは?」
はたっと気づいた時には姿がなかった。
どこかでカラカラとベルの音と、メェメェと鳴き声がするんだけど…。
「そっちの脇道に避難した。」
「少し窪地になっててヤギを落ち着かせるにはいいんだって。」
トウキとユウが言い、トウキがその方を指さした。
音はあっちからか。
「へぇ。行き止まりになってて逆に怖いとは思わないんだ?」
普通、そっちの方が怖い気がするんだけどな。
私は首を捻りつつも納得する。
「ほらほら。おしゃべりは後にして犯人の拘束を手伝ってくれ。」
先生は、敵さんの半分くらいを縄で拘束し終わったところだった。
早いな。
「「「りょーかーい。」」」
私達もそれぞれ取り掛かった。
私は窪地の淵に手をついて下を覗き込む。
「お爺さん…?」
カラカラと鳴るベルに埋もれる様にお爺さんはじっと座っていた。
とりあえず、怖がってるとか怪我してるとか、そういうのはないみたい。
「大丈夫ですかー?」
私の後ろからトウキがおざなりに呼びかけた。
その声に反応する様に不機嫌そうな顔がこちらを向く。
「倒したのか。」
開口一番がそれかい。
まぁいいけど。
「はい、倒しました。」
「そうか…。」
お爺さんはそう言うと、そのまま黙ってしまう。
なんだろな…。もっと喜ぶとかほっとするとか、違う反応してもいいだろうに。
何でだんまりなんだろ?
「さっきの奴らは制圧しました。出てきても大丈夫ですよ。」
先生が言うと、お爺さんはゆっくりと立ち上がった。