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もう一度、を叶えるために。first

第10章 下忍スタート



「湧水は道から外れた崖の上じゃ。行ってこれるもんでもない。」

成程ね。
けれど、ヤギ達は足りない様子。
すっごいお爺さんの水筒にせっついてるし。
汲んできた方がいいんじゃないかな。
そう思った私は木の根元に置かれていた水筒を手に取った。

「私、汲んできますよ?崖の上ですよね?」

「…儂の話しを聞いていたのか?」

「大丈夫ですよ。あっちの方角ですか?」

来る時にちらっと絶壁が見えたと思うんだよね。
指をさして確認すると、お爺さんは戸惑いながらも、そうだ、と返事を返した。
うん、当たり当たり。

「…お前さん、正気か?」

お爺さんは、唖然として聞いてきた。
そんな胡散臭そうに見なくてもいいと思うの。

「出来ますよ、エニシなら。」

先生の声が聞こえて振り返る。

「エニシは学年一位の成績で卒業していますから。崖を登るくらいはお手のものですよ。」

先生はそう言って私の頭を撫でた。
う〜ん、こそばゆい。

「お、照れてるぞ。」

「ほんとだ。顔赤くなってやんの。」

ユウとトウキが態々正面に回って確認するもんだから思わず顔を背けてしまった。

「うるさいなぁ。…じゃあ、行ってきます。」

歩き出そうとした私をにやにや顔で送り出す二人が視界の端に映る。

「一人で平気か?」

「迷子になるなよ?」

「ならないよ!」

私はすかさず振り返って怒鳴った。
くっそぉ、帰ったら覚えてろよ。

「エニシ、俺の影分身を連れて行って。何かあった時に分かるから。」

先生は言いながら胸元で十字の印を組んだ。

「あ、ありがとう。」

この流れで影分身を付けてもらうのは何だか示しが付かない気がするけど、先生の申し出だしねぇ…。
そう思いながら、ちらっとトウキ達を見ると、案の定にまにまと笑っている。
かあぁぁ〜!こんちくしょう!

…まぁ、しょうがないか。
私は諦めて歩き出した。

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