第10章 下忍スタート
つらつらと考えながら景色を見下ろしてたら、
「メェェエエ!」
なんかすりすりされた。
「え、なになに?」
何してほしいの?
ふと、向かいに目をやると、お爺さんが他のヤギにブラッシングやら水やりをしていた。
もしかして…、と思った私は、木に括り付けたロープを緩めてやる。
「メェェエエ!」
すると、途端に嬉しそうにお爺さんの方へ走り出した。
「そういうことか…。」
仲間を見て羨ましかったのか。
自分もしてほしいな、って。
ふはっ。
気持ちよさそう。
ブラッシングをしてもらってる間は気持ち良さそうに目を細めて、手が止まるともっともっと、って催促する。
他のは同じ様にブラッシングを強請ったり水を飲んだりと、競う様にお爺さんに集ってる。
ヤギってなんか面白いかも。
言葉は分かんないけど、全身で感情をぶつけてくるから気持ちが凄い伝わってくる。
なんか私もやりたくなってきた!
水やりくらいなら出来るかな、と思い、そっと手を伸ばすと、
「何をやっとる。」
地を這う様な低い声がかかって飛び上がった。
え、そんな怒ること!?
私がそろりとお爺さんを窺い見ると、何とも渋い顔が私を見ていた。
「水はもうない。」
みずはない?
何?どういうこと?
ちょっとしたプチパニックの中、目を瞬かせると、お爺さんは私の前にあった皮の水筒に視線を投げる。
「ヤギの水は空じゃ。」
「え、じゃあ汲んできたらいいんじゃ…」
「水源までは人の足では辿り着けん。」
んん?
どういう事?