第9章 まだ学生でいたいんですが。
その時、ぱた、ぱた、と誰かの足音が聞こえてきた。
次いで、すっと障子が開く。
「一応、そいつ病人だからな。勘弁してやってくれ。」
兄ちゃんが微苦笑を浮かべながら入ってきた。
手にはお茶が乗ったお盆を持っている。
「何も出せなくて悪いな。」
そう言いながら、兄ちゃんはお茶を二人に渡す。
「いえ、こちらこそ押しかけた形ですみません。二日休んだんでさすがに心配で…。」
トウキがお茶を受け取りながら答えた。
「二日もこの状態なのか…。相当無理したんだな。」
イタチは驚いてトウキを見た後、私を見た。
無理もするよ。
唯一私が出来る確実な事だもん。
医療忍術はイタチだけじゃなく、兄ちゃんを助けられる方法なのかもしれない。
もし、夢の通りに眼を盗られたとして。再生出来なくても傷の修復は出来るかもしれない。
むざむざ死なせなくて済むかもしれない。
そう思えば力も入るってもんでしょ?
そう思うのに、当の本人はやれやれといった感じで私を見るばかり。
「本当に。言い出したら聞かなくてな。」
まるでダメな子扱いなんだもん。
納得いかないわ〜。
「そんな顔してもダメだからな。結果は受け入れろ。無理するから体を壊すんだ。諦めも肝心だぞ。」
そう。家族中で医療忍者になる事は反対されている。
畑違いだからやめておけ、ってね。
けど、せっかく見えた光明を放る気は更々ない。
「…ぜったい、いや。」
絶対に諦めない。
けど、それを聞いた三人は揃ってため息をつく。
「こりゃ懲りてないな。」
「俺も医療忍者は畑違いだと思うぞ。」
「せめて休息日を作れよ。見てらんない。」
兄ちゃんは呆れ顔で頬杖ついて、イタチは諭す様に言い、トウキは手で目を覆って天を仰いだ。
ふんだ。
絶対に全部両立してやるんだから!