第8章 宝の持ち腐れ…は、まずいよね
「イタチはこの後、何処か出掛けるの?」
エニシからの問いにイタチは首を小さく横に振る。
「いや、任務も早く終わった事だしサスケのお守りをしようかと思ってな。」
本当は班の者から食事に誘われていたのだが、行く気にはなれず、そのまま帰ってきたのだ。
「そっか。じゃあ、任せてもいいかな。」
エニシはそう言うと、散らかっていたおもちゃを片付け始めた。
「帰るのか?」
どことなく、エニシを引き留めたいという思いが湧き起こり、彼女に尋ねる。
「そりゃ、まぁ。家族が帰ってきたならサスケもその方が過ごしやすいかな、って思って。」
尤もな返答ではある。
だが、イタチは引き留める為の理由を探し始めた。
「…母さんからサスケのお守りを頼まれたんだろう?」
「そうだね。」
「なら、母さんが帰ってくるまで待っていたらいいんじゃないか?母さんに報告して、初めて頼まれた事が完遂する事になるんじゃないか?」
言われたエニシは、そうか、と呟きながら腕を組んで考え始めた。
すぐに納得するかと思われたが、でもなぁ、と言ったり、それってどうなの?と言ってみたり、何やら思案している様子。
何をそんなに迷う事があるのかと、イタチは首を傾げる。
「何か問題でもあるのか?」
何気なく問いかけると、エニシは慌てて首を横に振る。
「あぁ、いや、何でもないの。こっちの話だから。」
答えになっていないその答えに、イタチは益々首を傾げるが言う気がないものを無理に問いただす必要もない。
ただ、引き留める事は難しいと思うと、少し残念に思うだけだ。
イタチは、サスケを見つめつつ密かに肩を落とした。
「あー…、やっぱりいようかな、と思います。」
そんな声が聞こえて正面に向き直ると、照れ臭そうに頬を掻きながら明後日の方を向くエニシがいた。
「イタチの言う通り、ミコトさんに報告してから帰る事にする。」
イタチの沈んだ心が浮上する。
これで、もう少しエニシがいる時間が増える、と思うと、心がふわりと軽くなった気がした。
「あぁ、そうするといい。サスケにまた歌でも歌ってやってくれ。」
「うん、いいよ。」
イタチの頼みに、エニシは嬉しそうに笑って頷きを返した。