第8章 宝の持ち腐れ…は、まずいよね
一方、エニシ達は…。
「ダメダメ。もっと真剣に投げて。」
トウキはエニシに当てる事を躊躇して、本気で投げられずにいた。
「いや…、そんな事したら…」
「大丈夫。当たっても擦り傷程度だから。寧ろ、そんなん気にしてたら修行にならないって。」
「じゃあ…、いくぞ?」
「オッケー。」
トウキは思い切って本気で投げてみた。
すると、エニシは全て叩き落とすか避けるかして、見切って見せたのだ。
「かなり本気で投げたのにな…。」
いやはや、うちはの名は伊達ではないらしい。
エニシの集中力は凄く、やればやる程伸びていくタイプなのだと実感する。
「まだまだ。これじゃあ、あの馬鹿兄貴に届かないって。絶対使い熟して次の事教えてもらうんだから。」
エニシはそう言って、トウキに次を急かした。
それに応えて、彼は先程よりも強く、また急所に当たる様に、逃げ道を塞ぐ様に投げていく。
そこで、はたっとトウキは気づいた。
成程、投げるにも技術が問われる。
精度が高くなければ、エニシの修行の為にはならないのだ。
「…意外と一石二鳥かもな。」
トウキもエニシに釣られる様に、次第に集中していった。