第8章 宝の持ち腐れ…は、まずいよね
「…いいのか?エニシは。」
イタチはちらちらと振り返りつつ、シスイに尋ねる。
「大丈夫だろう。巴一つだったらすぐに鍛えられる。」
シスイはイタチの様子を見つつ答えた。
「エニシが気になるか?」
ちょっとした揶揄いを含めてシスイが問うと、イタチは首を傾げた。
「シスイは気にならないのか?」
妹の事となれば、常とは違い焦りを見せる事もある彼の態度が意外だった。
「気にはならないな。同じクラスの子もいるし、十分修行は出来る。寧ろ、あの子がいる方がエニシにとってはいいかもな。」
シスイがそう答えると、イタチは、そうか、と言ってそれきり黙ってしまった。
心なしか気落ちしている様にも見える。
「何だ、やっぱり気になるんじゃないか。」
シスイの言葉にイタチは意外そうに目を瞠った。
「気に…なるんだろうか。」
イタチは自身の気持ちの区別がつかない。
エニシが修行するのならば、付き合ってやりたいと思うし、応援したい気持ちもある。
だが、トウキにそれを任せるのは何だかもやもやとするのだ。
そのもやもやが何なのか、イタチはそれに名前を付けられない。
「気になるからエニシに拘るんだろう?」
シスイにそう言われればそうかもしれないと思う。
だが、それだけでもない様な気もする。
「そう、かもしれないな。」
結局、イタチは曖昧に返すしかなかった。
そんな彼を見て、シスイは困った様に笑った。
「心配ない。そのうち容易に使い熟せる様になるだろうさ。」
シスイの見立てでは、トウキとエニシの実力は拮抗している。同じ実力同士であれば切磋琢磨しやすいのだ。
写輪眼の巴三つならまだしも、エニシの写輪眼は巴一つ。自分が付きっきりで修行に付き合う程でもない、とシスイは思う。
面倒だから、と言うよりは、エニシを思って、という気持ちの方が強い。
「巴三つまで上がったら、みっちり教え込んでやるさ。」
果たして、どのくらいで開眼に漕ぎつけられるか、とシスイは楽しみに思うのだった。