第2章 これからどうしよう
「…兄ちゃんはさ、前世って…信じる?」
まずは、聞いてみよう。
そこが土台となる以上、話しておかないと進まない。
「今の生の、前の人生。エニシって名前じゃなくて、体や顔も違うし、生活も環境も違う。そういうの、信じる?」
そろりと兄ちゃんを見上げると、少し困惑しながら私を見ていた。
私も、そこから否定されたら困惑するしかない。
「そこをさ、信じてくれないとさ…、どう話していいか、分かんないんだよね。」
そう言うと、兄ちゃんは少し考えた後、すっと真面目な顔になった。
「分かった。信じる。」
さすが、兄ちゃん。
とりあえず、受け入れてくれたみたいだ。
「私の前の名前はね、由紀っていうの。藤崎由紀。歳は19だった。やっと受験勉強から解放されて、偶には散歩でもしようかな、って思って音楽聞きながら歩いてたらさ、トラックに撥ねられて死んじゃったらしい。」
「らしい?」
「覚えてないの。でも、すっごい痛かった事だけは覚えてる。けど、何が起きたか確認しようにも体が全く動かせなくて、耳鳴りも酷くて、あっという間に気を失っちゃったんだ。」
兄ちゃんは驚いたみたいで目を見開いた。
「あ、トラックって何ってのは聞かないどいて。私も説明できないから。自動で動く大型の荷車って思っといて。」
車の成り立ちとか全く分かんないし、仕組みとかも全然分からない。
とにかく、こことは文化や文明が全く違いすぎて、説明に困る。
「まぁ、それは置いといて。」
「置いとくのか…。」
手振りで自分の死因について片付けた私を見て、兄ちゃんは苦笑した。