第7章 あっという間に卒業です
「エニシ、大丈夫か?」
トウキやイズミちゃん達が心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「へーきへーき。ちょっとくらっと来ただけだから。」
「いや、そっちも心配だけど、お前兄貴を馬鹿にされてさ…。」
ハルトが気まず気に口籠った。
「あぁ。いつかああいうのが出て来るだろうな、とは思ってたよ。だから、ちゃんと準備もしてたし。」
私がケロッとして言うと、みんなは何とも言えない顔でお互いを見合わせた。
「でも、書類破られちゃったし…。もしまた来たら…。」
イズミちゃんが私の手元に視線を落とした。
そこにはあいつに破られた紙の切れ端が数枚握られている。
「あぁ、これね。実はコピーなの。原紙は私が持ってるよ。」
そう言うと、彼らは一様に唖然とした。
「準備がいいと誉めるべきか…。」
「分かってて呼びかけをやるアホさ加減に呆れるべきか…。」
「いや、後者だろ。この場合。」
ハルト、ユウ、アオイが口々に言う。
「いやいや、そこは誉めてよ。口喧嘩で撃退したんだよ?ファインプレーでしょ。」
もっと用意周到さを誉めてほしいよ、わたしゃ。
けど、彼らは一様に半眼を向けてきた。
「「「お前、馬鹿だろ。」」」
「何でだよ!」
納得いかない。
「俺、こいつがこんなに向こう見ずな奴だとは思わなかった。」
「俺も…。」
ユウとハルトが頭を抱えた。
「何でよ?予測してたから対策立てて上手くいったんじゃん。」
「いやいや、予測してたんなら、まずは呼びかけの回数減らすとか、ちょっと休んで様子見るとか、そっちの選択肢をとれよ。」
トウキが呆れ顔で言う。
「やだよ。何で私が引かなきゃなんないのさ。」
「ほら、やっぱり向こう見ずの馬鹿だろ。」
「きぃぃぃ!馬鹿馬鹿言うな!」
何で馬鹿なんだよ。利口の間違いじゃないの!?
イズミちゃんを見ると、彼らの側で苦笑いを浮かべていた。