第7章 あっという間に卒業です
人混みに奴の姿が見えなくなったところで、一気に震えが戻ってきた。
「エニシ!」
ふらっとしたところをトウキに支えられて、何とか崩れ落ちずに済んだ。
「…ごめん、大丈夫…。」
あいつが態々私の所に出張るなんて、思ってもみなかった。
「お前…、大丈夫か?あいつ知ってる奴なのか?」
トウキが心配そうに顔を覗き込む。
「志村ダンゾウ、だと思う。暗部の…、それももっと暗い方の暗部の頭。」
「え…?」
トウキの顔がみるみる強張っていく。
まぁ、そういう反応になるよね。
私は思わず苦笑する。
「…お前、目付けられたんじゃ…。」
「さぁ…。どうだろう?」
だとすると、何でこんなしがない呼びかけ如きで態々ケチつけにきたのか。
「本当はあいつ、正解を知ってるのかもね。」
私の呟きにトウキは怪訝な顔をする。
「で、私の呼びかけで木の葉の人が疑問を持ち始めると厄介だと思った。」
「何でだよ?疑問を持っちゃ何が悪いんだよ。」
「うちはを悪く思わせたい何かがあるのかも。」
「何だよそれ。」
「さぁ?それこそ何か分からない。」
本当は知ってる。
クーデターを煽りたいんだ。
うちはを退ける口実がほしいんだろう。
「考えすぎじゃないか?」
トウキが不可思議そうに私を見返す。
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。ただ、こんな一介の小娘に目を付けるとしたら、”自分の邪魔をされたくないから”だと思ったんだよ。」
「お前…。」
トウキは息を呑む。
「推測だけどね。」
私は困った様に笑った。
「エニシ…。今日はもうやめた方が…。」
一緒にいたハルトとユウが不安そうに寄って来た。
今日はもうやれそうにないな。
私は二人の顔を見てそう判断した。
「…うん、今日はもう撤収しよう。」
私は内心の落胆を隠してそう言った。
くそっ、あいつさえ来なければ。
トウキはハルト達と私を見比べて、小さく息を吐いた。
「…そうだな。今日はもうやめよう。」