第6章 偉人のまねをしてみましょう
イタチは、その様子を見て柔らかく笑った後、すっと表情を引き締めた。
「話が脱線したな。父さんが犯人だった場合の動機だったか。」
「そうだよ、そう。その話してたんじゃんね。」
私がイタチの話に食いつくと、兄ちゃんは少し呆れ返った。
「俺はの場合はいいのか。」
「俺の場合?まず有り得ないね。
身内贔屓かもしれないけど、兄ちゃんが犯人の場合、街のど真ん中、家に近い場所に召喚するなんて可笑しいし。
街には私だっていたんだよ。しかも、よく行ってた事だって知ってたじゃん?」
私は兄ちゃんの疑問に、間髪入れず速攻で返す。
「まぁ、そうだな。」
「仮に召喚したとして、そんな事しといて、今の今まで何食わぬ顔して家族と一緒に暮らせるような人でなしには、兄ちゃんはなれないと思う。そんな様子も微塵もないし。
つーわけで、召喚する場所の矛盾と性格的観点から兄ちゃんは犯人にはなり得ない。」
「思いっきり身内贔屓に聞こえる気がするんだがな…。」
兄ちゃんは何とも言えない顔で私を見る。
「でも本当の事じゃん。」
当然でしょ。見てればわかるよ。
ま、客観的視点に欠ける事は認めるけど。
「まぁなぁ…。あ、そうだ。頼まれてたもの取れたぞ。」
兄ちゃんはそう言って立ち上がり、戸棚の上に置いてあった書類を渡してくれた。
見てみると、九尾事件前後二日間の任務完了報告書の控えだった。
「ありがとう!これで何か言われても反論が出来る。」