第6章 偉人のまねをしてみましょう
数日後。
日課と化しつつある呼びかけをやっていると、珍しい事にトウキの取り巻きが三人現れた。
「…この前は…、ごめん…。」
そして、揃って頭を下げられた。
右から、ハルト、アオイ、ユウだ。
私は、青天の霹靂な出来事に困惑するしかない。
明日は槍でも降るのだろうか…。
「あー…。うん…。気にしてないから。」
辛うじてそう答えると、三人はほっとした様な顔をで頭を上げた。
「じゃあ、俺達も手伝っていいか?」
はい?
いやいやいや。なんで?
私は理解が追いつかなくて目を瞬かせた。
「俺達もお前のビラ読んできたんだ。それにトウキも手伝うんだろ?だったら俺もやる。」
えぇ〜…?
何でこいつがやると、オレもやるってなるの?
それも、いい事だったらまだ分かるけど、明らかにやらなくていい事。
私が理解出来ないとばかりに首を傾げると、隣からトウキのため息が聞こえてきた。
「あのな、俺がやるからってお前らまでやらなくていいんだぞ?」
うん。珍しく気が合うね。
「周りから白い目で見られるかもよ?」
私もそろりと言うと、三人は一瞬ぐっと言葉を詰まらせたが、
「「「やる!」」」
最終的には食い下がった。
「…分からん。」
私は、ぼそりと呟いた。
あれよあれよと言う間に大人数に。
ちょっと前まで一人で呼びかけするところしかイメージ出来なかったのに、今じゃちょっとした選挙運動みたいになってる。
「何ぼさっとしてんだよ。」
いつの間にか横にトウキが並んでて、軽く肘で小突かれた。
「いや〜…、ははっ。ごめんごめん。なんか今のこの風景が信じられなくて。言ってみるもんだなぁってしみじみ思っちゃって。」
私が笑うと、トウキは困った様に少し笑う。
「そりゃ、まぁ…な。俺は何があったって…お前の味方するよ。」
珍しい答えが返ってきた。
んん?どういう風の吹き回しだろう?
私が解釈に困っていると、それを見たトウキがみるみる仏頂面になっていく。
「文句あんのか?」
「いや無いよ。てか、そうやっていつも喧嘩売る人が珍しいと思ったんだよ。」
ありのまま答えると、ふん、とそっぽ向かれた。
う〜ん、むずかしいぃん。
「ほら、やるぞ。」
「分かってるって。」
トウキに促され、私は今日も声を張り上げた。