第6章 偉人のまねをしてみましょう
「あ、あの…!」
呼びかけをしていると、横から声がかかった。
何だ?と思って、そちらを見ると知らない女の子が立っている。
緊張した様な、不安な様な複雑な表情だ。
「あの…、私も手伝っていいですか?」
え?これを?
いや、うん、その前に…。
「どちら様…?」
見た事ないんだけど…。
「あ、私…。」
そう言って言葉を切って俯いてしまう。
だが、すぐに顔を上げた。
「私は、うちはイズミと言います。」
うちは?
…あぁ〜、思い出した。
「ハーフの。」
「ハーフ?」
「あ。いや、ごめん。こっちの話。ミサさんちの子だよね?」
お父さんは里の人で、お母さんはうちはの人だ。
うちはから見ると、所謂ハーフの子。
「あれ?何年生だっけ?」
背丈からして一年生かな?
同級生にはいなかった気がするけど。
「一年です。イタチと同じクラスの。」
同じクラス?もしかして…。
「…この前、イタチと上級生の喧嘩に割って入らなかった?」
私が問うとイズミちゃんは、あっ、と声を上げた後、恥ずかしそうに俯いた。
「…はい。」
「そっか…。」
この子が…。
私は複雑な気分になった。
気を失ったこの子をイタチが支えてた。
だから何だ、と聞かれてもどうにも答えようはないんだけど。
私の沈黙を否定と取ったのか、イズミちゃんの顔が曇っていく。
「あの、ダメですか…?」
その言葉に、はっと我に返って慌てて首を横に振った。
「ごめんごめん、そんなんじゃないの。手伝ってくれるなら大歓迎。だけど、大丈夫なの?これ、悪目立ちするよ?」
「やります。私もエニシさんの考えに賛成だから。」
イズミちゃんは、しゃんと背筋を伸ばして真っ直ぐ私を見る。
私は少し笑った。
賛同してもらえるのは凄く心強い。
「じゃあ、お願い。そっちのプラカード持ってくれる?」
私は言いながら、イズミちゃんを促した。