第6章 偉人のまねをしてみましょう
イタチはエニシが去った後、暫しベンチに座ったまま空を眺めた。
「言葉、か…。」
己の信条とは真反対の考え方だが、初めて明確な答えを貰えた気がした。
平和とは何か。
そこへ至る道筋に必要な事は何か。
イタチは常にそれを考えてきた。
誰よりも優秀な忍になって、この世から一切の争いを無くす。
これがイタチが考え抜いた末の、平和への道筋だった。
しかし、迷いもあった。
これでいいんだろうか、この方法は間違っていないだろうか、と。
けれども、誰もイタチの問いに明確な答えを返す者はいなかった。
「色々な方法の一つ…。」
イタチは先程のエニシの言葉を思い出す。
この道が一番正しいと、平和への道筋に近いと信じて今まで努力を重ねてきた。
だが、彼女の言葉を通して見えた、イタチとは別の平和への道筋。
エニシは言葉を選んだ。
イタチは、誰よりも強い忍になる方法を選ぶ。
この方法が間違いであるという答えは、まだ出ていないから。
「何事もやってみなけりゃ分からない、だな。」
イタチは空を見ながら微笑んだ。