第6章 偉人のまねをしてみましょう
「本当の話だよ。遠い遠い異国の話。
ついでに言えば、私は言葉には力が宿ると思ってる。」
言霊。
日本古来の言い伝え。
「言の葉一つ一つに魂が宿る様に、力を持つ事が時にあって、それが大きな力となる事もある。」
私は好きな考え方だ。
けど、一度出た言葉は戻らないから、発言には慎重になる様に、っておばあちゃんが言ってた。
「…だが、言葉は所詮言葉だろう?暴力の前では無力だと思うが…。」
イタチは戸惑いつつも納得いかないらしい。
まぁ、イタチの考え方とは真反対だもんね。
「力を示して黙らせる、または認めさせるってのは、方法の一つだと私は思ってる。だから、私の方法が正解とも限らないし、力で以って人を制するって考え方が間違ってるとも思わない。」
「そうか…。」
「いろんな方法があると思うの。
でも一つ言えるのは、”何事もやってみなけりゃ分からない”だと思う。」
私がにっと笑ってイタチを見ると、彼も私を見返して目を瞠った。
私はまた前を向く。
「だから、私はやってみる。やってダメだったら最後の最後に諦める。逆を言えば、最後の最後まで諦めない。」
私は自分に言い聞かせる様に言う。
どうにもならなくなるまで前を向いていられる様に。
言の葉に力を乗せる様に。
「そうか。」
「うん。」
ガンジーは言ってた。
人に変わって欲しいと思うなら、自ら率先して変化の原動力となるべきだ、って。
だから、私がその変革の目になる。
どう転ぶかは分からないけど、変わらないかもしれないけど、やらないで後悔するよりやって後悔したい。
私はすくっと立ち上がった。
「じゃあ、私行くね。色々と準備しなきゃ、だからさっ。」
私はそう言って笑うと、イタチに手を振って走り出した。