第6章 偉人のまねをしてみましょう
空に流れる白い雲。
眺めているとぐんぐん流れてく。
明日は天気悪いのかな。
「何故…。」
そう言ってイタチは言葉を切った。
「何故、呼びかけをしようと思ったんだ?」
イタチを見ると、私を真っ直ぐ見ていた。
「正直、俺も父さんと同じだ。そんな事をしたって何が変わるとは思えない。
忍は強さが全てだ。強い者が全てを握る。」
まぁねぇ。
日本でも、勝てば官軍、負ければ賊軍、なんて言葉があるくらいだし。
でも、そう単純な事でもない気がする。
私はもう一度空を見上げた。
今は、随分遠くなった過去の記憶を辿る。
「…ある国のお坊さんの話なんだけどね。」
私が好きな偉人の一人。
マハトマ・ガンジー。
「その人の名言の中に、”暴君や殺戮者は一時無敵に見える。だが、歴史を見れば最後に勝つのは愛と真実だ。”って言葉があるの。
その人はね、暴力を振るわれたら暴力で返すんじゃなくて、非暴力で抵抗したんだって。」
「非暴力って何だ?暴力を受けたらそのまま受け止めるのか?」
イタチは怪訝な顔をした。
「非暴力はね、無抵抗を示す事じゃないの。弾圧されても、暴力受けても、言葉を以って根気強く伝える事なんだって。
何故抵抗しているのかと、その理由をね。」
「…綺麗事じゃないか?」
私も初めて聞いた時は綺麗事だと思ったなぁ。
「ところがね、そうでもないんだな。
当時、その国は強軍国家に支配されてた国だったの。所謂植民地だね。けど、そのお坊さん達の非暴力運動が、強軍国家からの独立まで果たしたの。」
「…それ、本当の話か?聞いた事ないんだが…。」
それを聞いて、私は苦笑した。
前世だからね。
星を飛び越えてるから、疑いたくなるのも無理はないかな。