第1章 キス/尾形・現パロ※
彼と過ごす日々は私にとって
楽しかった
キスも嫌じゃなかった
少しずつ彼の事を知る度に
ドキドキと胸を躍らせた
彼の仕事は普通のサラリーマンで
あのBARはただの趣味で
たまに開けているらしい
歳も27だと聞き
私より年下で可愛いな、
なんて揶揄ったりした
年下だと知ってから呼び方が
尾形さんから尾形くんに変わった
彼もその事に関しては何も言わなかった
初めは苗字しか知らなかったが
ちゃんと名前も聞いた
百之助くん。物凄くかっこいい名前。
あれから一ヶ月程月日は流れて
今日は土曜日。
私が尾形くんのBARに行きたいと言ったら
店を開けてくれると言ってくれて
仕事が終わって一度家に帰り
着替えてから、私はうろ覚えな記憶を頼りに
彼のBARまでやって来た
ドアにはCloseと書かれた看板が
掛かっていた
あれ?と思いながら
ドアノブに手を掛けると
簡単に開いてしまう
そのまま中へ入ると
バーカウンターの中に
尾形くんの姿を発見した
私が来た事に気付いた彼は
こちらを向いてふっと柔らかく笑い、
初めて見た笑い方に
ドキドキと心臓が騒いだ
『入っても大丈夫だった?』
「ああ、今日は貸し切り」
『ふふっ、ありがとう
わざわざお店開けてくれて』
カウンターに座ると
何飲む?と聞かれて
ハイボールと答える
直ぐに用意してくれて
私はぐびぐびと半分くらい飲んだ
炭酸が喉をしゅわしゅわと
通り過ぎる感覚が堪らない
彼は私の姿をじっと見てきた
『どしたの?』
「…いや、今日の服…」
今日は珍しくワンピースだ
何となく外出するし
彼に会うし…と選んだ服
彼と会う時は仕事帰りのままの
スーツ姿か部屋着姿だったから
物珍しいんだろう
『可愛いっしょ?似合ってる?』
「ああ…」
少し照れた様に言う彼の方が
可愛くて、にやにやと酒を飲み干した
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