第1章 キス/尾形・現パロ※
何もしないと伝えれば
納得してくれた様だが
俺の欲までは理解してくれていない
彼女は胸に顔を擦り寄せて
気持ち良さげに目を閉じる
俺はぐっと目を閉じ
深呼吸を繰り返した
しばらくすると彼女から
寝息が聞こえてきて
無防備に腕の中で眠る彼女に
酷く欲情した
こんなにも欲しいと思った女は初めてだ
同時に拒まれるのを恐れて
俺は手を出せないでいた
***
朝目が覚めると
私の腕の中には大きな猫ちゃん…
じゃなくて尾形さんと言う
昨日成り行きで家に連れて
帰ってしまった男性が
胸に顔を擦り寄せて眠っていた
眠った時とは逆…
彼の第一印象は
ミステリアスで
何処か儚げなバーテンダーさん
今の印象は
可愛い甘えん坊の猫ちゃん
よしよしと頭を撫でながら
部屋に掛けてある時計を見れば
朝9時を回った所だった
今日は日曜日で仕事は休みだ
じゃなきゃ昨夜あんなに飲まない
思い出したかの様に頭がズキズキと痛み
胸にムカつきを感じた
二日酔いだ
二日酔いになる程お酒を飲んだのに
いつも大体記憶はある
彼を連れ帰った経緯も覚えている
本当に何もしなかったな…
ちょっとでも手を出されるかと
思っていたけど
意外と言った事は守ってくれるんだ
あー、頭が痛い
二日酔いに効く薬を飲もうと
彼を引き剥がして
ベッドから抜け出した
キッチンに行きウォーターサーバーから
水を汲み錠剤の薬を口に含み
水で流し込んだ
洗面所へ行き顔を洗い
歯を磨き
再びリビングへ戻ると
のそのそと寝室から彼が起きてくる
私のそばまで来ると
まだ寝ぼけているのか
私の体をぎゅっと抱きしめ
掠れた声で「おはよ」と言ってきた
『おはよう。
まだ寝ぼけてるんですかー?』
そう言いながら体を引き剥がすと
彼は不満げな顔をする
キッチンへ行き
新しいグラスに水を注ぎ
彼に渡すとそれを飲み干した
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