第1章 俺の嫌いなモノ
幸希side
1時間ほど経っただろうか。
あれから何も考えられない。
確かに自分の感情のまま千尋に当たってしまったのは悪かったと思う。
アイツもそうなりたくてなった訳じゃない。
俺だってそうだ。
「はぁ...」
俺はこの先どうしたらいい。
千尋と番になるのか?
でもそれがこの世界での「普通」ってやつだ。
αがαと番になるなんて聞いたことない。
そんなイレギュラーなことはあってはならない。
だったら...諦めるしかないのか...
「遥。入っていい?」
ドアを3回ノックし、中にいる遥に声をかける。
内側から扉が開けられ、出てきたのは遥だけだった。
「その...2人にして欲しい...」
遥は一瞬不安そうな顔をしたが、中にいる千尋の様子を一瞬伺い頷く。
俺は中に入り、遥は部屋から出ていった。
「幸希くん...」
「えっと...確か千尋...だったか?」
「っ!...はい。そうです。」
少し強めの薬を飲んだのか、発情期が治まっているようだった。
これでお互いまともに話が出来そうだ。
「...さっきはごめん。...顔大丈夫?怪我とか...」
「う、うんっ...なんともない...柔らかかったし...僕もごめんなさい。自分で制御出来ずに幸希くんに欲情してしまって。嫌だったよね。」
「いや...あれは俺も...というか仕方ないだろ...」
なんとも言えない気まずい空気が流れる。
今日初めて出会って、今日運命の相手だと分かって。
どう考えてもすぐに打ち解けるなんてできるはずがない。
でも...
「もう遅いし、飯食っていく?」
「うん。遥さんも食べて行ってって。」
「そう。...下に行こう。」
「うん。」
話しずらい訳じゃない。
どちらかと言えば話しやすい。
これも、俺達が特別な関係だから?
...いや、流石にそれは違うのかもしれない。
「...なんで親父いんの...」
リビングに戻ると親父が帰ってきていた。
「家族なんだから当たり前でしょ?」
遥が4人分の食事を用意しながら話す。
「僕手伝います。」
千尋が遥の元へ行き皿を並べる。
こうやって見ると、本当に家族みたいだ。
姑と嫁...みたいな...
いやいや...そんなことあってたまるか...