第3章 片想い
千尋side
「この後クラスに戻らないと行けないんだろ?」
「あ、うん!残りの時間頑張らないとね!」
「教室まで送る。」
僕の心配をしてか幸希くんが一緒に教室まで着いてきてくれようとした。
でも今は少し1人になりたい気分だった。
「だ、大丈夫!僕一人で行くよ!ついでにトイレにも行きたいし!それよりほら!幸希くんのこと待ってる人達いるよ!」
劇を見て幸希くんと写真を撮りたがっている人達が群がっていた。
こんなにかっこいいんだから仕方がない。
「じゃあ、僕は行くね!」
「あ、おい。帰りはどうするんだよ……」
僕は幸希くんの声を無視して教室近くのトイレへと向かった。
早く1人になりたくてつい足早になってしまう。
奇跡的にトイレには誰も居なかった。
一番奥の個室に引きこもり両腕で顔を隠すように座り込む。
あの幸希くんの顔……きっと拓真さんの事が好きなんだ。
あんな風に心から笑って、顔を赤くして、声のトーンが高くなって……
僕も知ってるあの感情は恋だ。
それに気づいてしまい、つい2人の会話に割り込んでしまった。
悔しくて、これ以上話して欲しくなくて、僕だけを見てて欲しくて。
邪魔をしてしまった。
僕の幸希くんへのこの気持ちは一生届かないんだと確信した。
「うっ……悔しい……ぐす……僕だって……こんなに大好きなのに……」
我慢していた涙も溢れ出てきて止まらなくなった。
早く教室に戻らないといけないのに。
諦めなきゃいけないって分かってる。
でも……どうしても好きなんだ。
「うぅ……幸希くんのばか……」
僕は失恋した痛みを噛み締めながら落ち着くまで泣き続けた。