第2章 距離
幸希side
「ただいま。」
「おかえりー。あれ、千尋くんは?」
「体調悪そうだったから送ってきた。」
千尋はあれから元気がない。
元々周りからの目は気になっていたが、あんな風に直接声を聞くとなると余計に実感する。
後で連絡でも入れておくか。
「あ、そうだ、遥。最近体の具合とか変わりないの?」
「へ!?どうして!?//」
なんで顔赤くなっているんだ?
「いや、ヒート期来てないなって。別に何ともないならいいけど。」
「だ、大丈夫だよ!元気元気!//」
そう言って台所へ戻って行った。
遥の様子に疑問を持ちながら俺もリビングへ向かう。
「おかえり、幸希。」
リビングに入ると聞き覚えのある声がした。
この低くて安心する声は……
「叔父さん!」
叔父さんが柔らかい笑顔で手を振ってくれる。
かっこいい……
見てるだけでドキドキしてしまう。
俺は鞄を適当に置き、叔父さんの元へ駆け寄る。
「なんで居るの?」
「一緒にご飯食べようって思って。例の恋人は今日いないのか?」
「あ……うん……知ってたんだ。」
「遥から聞いた。よかったな。」
「……うん。」
叔父さんには知られたくなかった。
そもそも伝えるつもりもなかった。
折角会えたのに気持ちが沈む。
「幸希?どうかしたか?」
「……ううん。あ、そうだ。そのΩのやつが、そろそろヒート期で……叔父さんならどうしてあげる?」
「うーん……俺なら仕事の休みを取って家事全般は俺がするかな。あとは寄り添って身の回りの事を手伝ったり。ヒート期のΩはαの匂いが付いた物を集めて巣作りをするから服とかを渡したり。あとは抑制剤も忘れないように飲ませることかな。俺の場合は遥に坂間さんの物を渡してたけど。」
叔父さんかっこよすぎる。
それをして貰えるΩが羨ましい。
俺もΩだったらそんなことして貰えたのかな。
「……もし、俺がΩだったら叔父さんはそれしてくれんの?」
「え?うーん……幸希は甥っ子だし……そこまでは干渉しないかな。遥も俺とか坂間さんには幸希に近づかないように言うだろうし。」
甥っ子……そうだよな……
改めて叔父さんとの関係を痛感する。
そもそも何で俺はαに産まれてしまったんだろう。