第2章 距離
幸希side
それから1ヶ月程経った。
千尋の周りは前に比べて静かになった。
変に絡んでくるやつも、襲ってくるやつも居なくなってきた。
「幸希くん、やっぱすごいね……」
「え?あぁ……」
今回の中間試験の結果を人混みの中2人で見つめる。
結果はどうでもよかったが、千尋が見に行こうと手を引いた。
「また1位!流石αよねー!」
「顔もかっこよくて頭もいいって最高すぎるよねー!」
周りがザワザワしてきた。
学年トップには俺の名前と点数が書いてある。
「それなのにあの隣にいる子……釣り合わなすぎるでしょ。」
「Ωらしいよ?坂間くんも可哀想よね……ずっと付きまとわれて。」
隣にいる千尋が気まずそうに下を向いている。
明らかにわざと聞こえる声で悪口を言っている。
「行こう、千尋。」
「……うん。」
いつもなら話が絶えない千尋も教室まで静かだった。
もうすぐヒート期が来ることもあり精神的にも辛い時期だ。
こういう時、実際どう対応するのが正解か俺には分からない。
遥の時も何もしてやれない。
親父はどうしてるっけな……
……そういえば遥のヒート期来てないな。
どこか体でも悪いのだろうか。
心配だし帰ってから様子を見てみよう。