第2章 距離
千尋side
帰り道。
冷たい風が頬を撫でる。
秋が近づいてきたのを感じる。
星も綺麗だ。
「寒くなってきたな。」
「そうだね。……もうすぐ文化祭か……。」
「そうだな。文化祭、一緒に回るか?」
「え……いいの?」
幸希くんからのお誘い。
凄く嬉しい。
「校外からも色んな人集まってくるし、いつもより危険だろ。俺といた方が安全だし。」
「あ……そうだよね……うん。ありがとう。」
この誘いに幸希くんの好意はない。
当たり前か。
立場上、僕を守るため。
それでも嬉しい。
「またお互いの出し物とか決まったら話すか。」
「うん。また連絡するね。……あ、ねぇ幸希くん。」
聞いていいか分からなかったけど、やっぱり気になってしまう。
「遥さんって過去に何かあったの?……幸希くんも……」
好きな人だからか知りたくなってしまった。
もっと知って隣にいたい。
苦しみも共感したい。
「……なんで?」
少し考えて幸希くんは立ち止まり、僕の方を見た。
顔は怒っていない。
聞かれても別に構わないのかな。
「ちょっと気になって……」
「……そこの公園に寄ろう。先に行ってて、飲み物買ってくるから。」
「ありがとう。」
僕は公園のブランコに座り幸希くんを待った。
誰もいない静かな公園。
1人だと怖くて来れない。
「はい、ココアで良い?」
暖かいものを買ってきてくれた。
少し寒いと思ってたから丁度よかった。
幸希くんちゃん考えてくれてるんだな。
「うん、ありがとう。いただきます。」
「……話聞いてるうちに辛くなったら言ってくれ。Ωのお前にとってはしんどいかもしれない。俺も初めて知った時は結構辛かったし。」
「……うん。」
僕は覚悟して話を聞くことにした。