第2章 距離
千尋side
先程幸希くんに掴まれた腕がジンジンと痛む。
かなり強い力で握られたのかな。
でもそれだけ嫌だったってことだよね。
『触るな』
過去に何かあったのかな。
幸希くんは気づいていたか分からないけど、目が潤んでいた。
顔は怒っていたけど凄く怯えているように感じた。
「ご馳走様。」
「ご馳走様でした。」
ご飯を食べ終え、2人で手を合わせる。
遥さんが嬉しそうにこちらを見ている。
本当に綺麗な人だと思う。
僕もこの人みたいになりたい。
幸希くんの好みの男性になりたい。
「遥。俺、千尋とは運命の相手ってやつみたいなんだ。それでこれからコイツと一緒に居ようと思う。」
『付き合ってる』とは言わなかった。
それは嘘になるから。
それを聞いた遥さんは驚いていたけど、直ぐに笑顔になった。
「そっか……そっかぁ!千尋くん、色々迷惑かけると思うけどよろしくね。……嬉しいな。2人には幸せになって欲しいし。」
少し顔が曇った気がした。
声のトーンも下がった。
でも心からそう思っているのが伝わってきた。
「本当に……よかった。」
泣いている……?
そんなに嬉しいのかな?
「あーもう……遥……泣くなよ……」
幸希くんが困ったように遥さんの涙を拭いている。
きっとこの家族にしか分からない思いがあるのだろう。
確かに遥さん若いし……
「さ!もう遅いし!幸希、千尋くん家まで送ってあげて。」
「うん。」
僕らは幸希くんの家を出て真っ直ぐ家まで向かった。