第2章 距離
幸希side
「失礼します……先生、体調悪いんで休ませて……あ……」
「こ、幸希くん……っ」
千尋が先生の前に座っていた。
そういや保健室に行けって俺が言ったんだったな。
……素直に来たのか。
そういう所も遥に似ている。
「だ、大丈夫?体調悪いの?」
「……はぁ……お陰様で。……腕は?」
「大丈夫だよ。僕教室に戻るね。」
俺の機嫌を察したのか慌てて保健室から出ようとする。
あんな事があっても教室に戻れる精神がすげぇよ。
周りにはΩだって知られてるのに。
「……体調戻ったから俺も教室行く。」
「え……」
先生は一瞬驚いた表情をしたがすぐに「そう」と言って笑顔になっていた。
これまでに何人もの生徒を見ているから何となく察知したのだろう。
俺は千尋と保健室から出て教室までの廊下を歩く。
俺たちの教室は本館の2階。
HRの時間まで隣をゆっくりと歩いた。