第2章 距離
幸希side
今日は周りの視線が気になる。
いつもは注目すらされない、というより注目されないようにしていた。
「あ、あの人だよ!この学校で唯一のαって言われてる人!」
「嘘!めっちゃかっこいいじゃん!しかも確か学年1位の人じゃない?」
「そうそう!だからほんとαなの納得だよね!」
教室でイヤホンをして本を読んでいても視線と声が気になって集中できない。
一体どこで情報が漏れたのか……
もしかして今朝の騒動か?だとしたら……
「でもほら……お父さんが元ヤクザって話じゃん?」
「え……こわ……でも流石に『元』だからもう関係ないんじゃない?」
「わかんないよー。性格に難ありかも……?」
やっぱりその話も漏れてるのか。
別に友達がいる訳でもないからどうでもいいけど、そういうので注目を集めたくない。
俺は周りの目が気になって場所を移すことにした。
HRも出たくない。
あの教室にいたくない。
注目を浴びたくない。
「……気分わりぃ……」
仮病を使って保健室に行くことにした。
そうすれば教室に居なくて済む。