第2章 出会い
…か…。呼びやすい名前だ。
『…ッ。』
女が目覚めたようだ。
「。」
『な…なんで私の名前を…』
「身分証を見た。熱はまだ下がってない。寝とけ。」
『は…ちょ…あれ、着替え…』
「大した身体じゃなさそうだから何もしていない。」
『くっそだな。』
「口が悪い。」
起き上がる力も無いのか、という女は横になったままギロっと俺を睨んだ
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酷く頭が痛いし、体が熱いし、めちゃくちゃ寒い
私が何故雪山に居たのか
理解ができない
そもそもこの男は誰なのだろう
私、着替えてるし
この男が着替えさせてくれたのだろうか
尋ねるとムカつく答えが返ってきた
男は無表情で何かを考えていた
髪を撫でるような仕草が妙に色っぽい
顎に傷がある
服装も妙だ
『そうよよ。そちらもお名前教えて下さってもよろしいんじゃ無いですか?』
「…尾形だ。」
『尾形さん…ありがとうございます』
「!!」
一応、助けてもらったようなもの
雪山に置き去られていたら今頃私がお陀仏だ
お陀仏…お陀仏…!!
ちょっと!!犯人どうなったの!!
『ちょっと!電話!!電話持ってません?』
「電話?」
『で・ん・わ!!』
「そんなものこんな宿にある訳なかろう。」
『いや、私のポケットに入って無かったですか?』
「ポケットに電話なんぞ入るわけがない」
『あれ…無い…』
無い…。私のスマホが無い
無線も無い…取ったのか?
でも尾形さんは取った感じゃない
直感でそう思った
ポケットに電話入らないとか変なこと言うし
何か違和感を覚えた
そう言えばここ、どこなの
何で雪山に居たの
『ここは何処ですか』
「宿だ」
『違う。』
「違わない。」
『そうではなくて、この場所です』
「だから、宿だ。」
『…意地悪言わないでください』
「ようこそ、小樽へ」
『お…た。北海…道⁉️』
いやいや、全然ようこそじゃねーわ
どうして北海道?
『北海道……北海道……』
「何しに来た。こんな大昔に」
『何言ってるんですか、尾形さん』
「何しに来た。100年以上も前に」
『え?』
「1990年生まれなんだよな?」
『はい…』
「今は1905年だ。」