第2章 出会い
女が立っていた
無表情で立っていた
俺が言うのも何だが…無表情だ
こんなクソ寒い雪山に上着すら着ていない
「ん?」
女は右手に拳銃を持っていた
鶴見中尉側の奴だろうか…
あまりにもボーッと立っている女に俺は声をかけた
一か八かで
「お前は何者だ」
女は『お前こそ何者だ』と答えて来た
変にキョロキョロする訳でもなく、異常なくらい落ち着いていた
俺はもう一度声をかけながら手に持っている拳銃を狙おうと銃を構えた時だった
パァァァァンと一発
外套の頭巾部分を撃たれた
やるじゃねえか
ただモンじゃない気がして来た
俺は興味が湧いた
そもそも女だ
女が拳銃を持ってここで何をしている
名乗るつもりもないらしい
そしてフッと女は意識を手放した
「あーあ……熱あるじゃん。」
俺は何故か…本当に何故かその女を抱えて宿へ戻った。
「…恨むなよ」
今、滞在している宿で俺は女を着替えさせていた
あのまま雪山に置いていこうともしたが
なぜか連れて来てしまった
バアチャン子だからだろうか
相変わらず熱にうなされている女には意識が無い
だがこんな真冬にシャツ一枚じゃダメだ
しかもずぶ濡れだ
別にこの女の身体に興味なんか無い
女を抱きたけりゃ他に見つけられる
そう思いながら淡々と服を脱がしていく
シャツの胸ポケットから身分証と思われるものが落ちた
まぁどうでも良い
宿の浴衣をそっと着せて、そのまま布団に寝かせた
………。
気になる。
俺は先程の身分証を見つめた。
は?
1990年5月…生まれ…は?
俺の方が寒さで頭やられたのだろうか
今は1905年………。
85年も先の人間なのか?