第10章 奇襲
痛みに耐える宿儺を無視し、加茂憲倫は反対側の指も手にかけた。
『止めて! 何するの?! 止めて!!』
必死に加茂憲倫の腕を掴み、宿儺から引き離そうとするが相手は男だ。
女の力で引き離せるはずがなかった。
「あぁ素晴らしい呪力だ。
頸を落としたら…、もっと強い呪力が溢れるのかな?」
血だらけの小刀を持ち直し、宿儺の正面に立つ加茂憲倫。
あすか はゾッとし、蒼に命令した。
『蒼! 宿儺さまを助けてッ!』
気温を操っていた呪術師か呪霊が死んだため、気温が戻り本来の力を発揮できるようになった蒼が現れた。
小刀を高く突き上げ、振り下ろそうとする加茂憲倫。
蒼は瞬時に宿儺の体に入り、内側から呪力の膜を張った。
宿儺の指を切り落とした小刀は、蒼の呪力の膜によりパキン、と折れた。
「チッ…。
まぁ良い。良い収穫だった」
そう言い、加茂憲倫は宿儺から離れると 地面に座り込む あすか の前にしゃがみ、ニコリと笑い、血の刃で あすか の心臓を貫いた。
「もともと自害するつもりだったのだろう?
これで宿儺や、愛しい我が子の所へ逝ける」
良かったな、と言い加茂憲倫は あすか から悠の死体を取り上げた。
『返…し、て……
悠…………』
悠に手を伸ばすが、立っている加茂憲倫には届かない。
あすか の視界が霞みはじめ、悠を掴もうとした あすか の腕は力を失い、その場に崩れた。
加茂憲倫は振り返ることなく その場から去って行った。
蒼は宿儺の体から離れ、あすか のもとへ駆け寄る。
宿儺は やっと加茂の紐を千切り、自分の指を反転術式で治すと、あすか にも反転術式を行った。