第10章 奇襲
人間の時と変わらない暖かい腕に抱かれ、あすか は はじめて声を出して泣いた。
宿儺は静かに謝り続けた。
すまない、と。
すると突然、背後から声をかけられた。
「可哀想に、宿儺」
振り向くと口角を上げ、微笑む加茂憲倫が居た。
宿「表情と言葉が合っていないぞ…」
ギロリと睨み付ける宿儺。
「愛しい我が子は殺され、お前は呪いとなった。
手に入れた大切な家族はバラバラになってしまったなぁ。
さぁ、絶望に満ちた顔を見せてごらん。私が憎いか宿儺?」
そう言いながら近づいてくる加茂憲倫。
宿「変人め…」
あすか と悠を自分の後ろに隠し、宿儺は加茂憲倫と対面した。
「良い顔だ、良い!
もっと私を憎んで負を募らせろ!」
煽るように そう言う加茂憲倫に、宿儺は舌打ちをした。
「最強の呪いと最強の加茂家!
良いでは ないか! 誰も私に逆らえない!
私の望む世界になるのだ!」
満足そうにそう言い、加茂憲倫は懐から何かを宿儺に向かって投げた。
片手でソレを払い除けると、加茂憲倫はニヤリと笑った。
「触れたな」
宿儺が払い除けたソレは、ただの紐のように見えたが加茂憲倫が印を結び、呪力を流し始めると宿儺の体に向かって伸び、4本の腕ごと宿儺を拘束した。
「さぁ宿儺、その禍々しい呪力を切り分けよう♪」
宿儺を拘束する紐は、加茂家得意の血液を介した特殊な紐だったようだ。
紐を切る事に時間がかかった宿儺に、加茂憲倫は近づき、小刀で宿儺の指を切り落とし始めた。